所感雑感

くだらないひと。

旅客営業規則70条と払い戻しの話

 以前、東海駅から代々木駅までの乗車券を「常磐・武蔵野・総武・東海道・山手1・中央東・篠ノ井信越3・北陸新・高崎・東北・総武2・中央東」という経路で発券し、途中の高尾駅で払い戻しをした。

 なんとなく軽い気持ちで払い戻しをしたが、結構な厄介案件であったなと思う。まず頭に過ぎったのは大都市近郊区間だが、それはあくまで「経路選択」の話であり「運賃計算」の話ではないのでスルーした。1番悩ましいのは旅客営業規則70条である。ここで旅客営業取扱基準規程109条を引用する。

 (特定区間を再び経由する場合の普通旅客運賃の計算方)

第109条 規則第69条及び同第70条に規定する区間の一方の経路を通過した後、再び同区間内の他の経路を乗車する場合の普通旅客運賃は、旅客の実際に乗車する経路の営業キロ又は運賃計算キロによつて計算することができる。

 ちなみに「できる」であるため特に差し支えない場合であれば最短経路で計算するはずである。ただ、今回の案件は70条区間を1度通過し、その後また戻ってくる経路で、最短経路で計算すると経路が重複してしまうため、実際の乗車経路によって運賃が計算されている。

 次に使用開始後の払い戻しの規程である旅客営業規則第274条を引用する。

 (旅行開始後又は使用開始後の旅客運賃の払いもどし)

第274条 旅客は、普通乗車券を使用して旅行を開始した後、旅行を中止した場合は、その乗車券が、有効期間内であって、かつ、その乗車しない区間営業キロが、100キロメートルを超えるとき(乗車変更の取扱いをしたため100キロメートルを超える場合を除く。)に限って、これをその旅行を中止した駅に差し出し、既に支払った旅客運賃から既に乗車した区間の普通旅客運賃(当該乗車券が往復割引普通乗車券以外の割引乗車券で、旅行を中止しても既に乗車した区間だけでその割引条件を満たすときは、割引普通旅客運賃)を差し引いた残額の払いもどしを請求することができる。この場合、旅客は、手数料として、乗車券1枚につき220円を支払うものとする。

  高尾駅で旅行を中止したため、残りのキロ数は473.3kmとバンバンで残っており、また学割を適用した乗車券だったので、元の乗車券の値段から東海駅から高尾駅までの学割が適用された普通旅客運賃プラス220円が引かれた額が戻ってくると分かる。

 ここで問題となるのは東海駅から高尾駅までの普通旅客運賃が70条区間最短経路で計算した運賃なのか、それとも券面通りの運賃なのかということだ。どちらも同じ値段なら素晴らしいのだが、最短経路で計算した場合、194.2kmで学割適用し2680円、券面通り計算した場合、204.4kmで学割適用し2930円と異なった運賃となってしまう。

 私の見解と実際の駅での対応、どちらを先に書くか悩むが駅での対応を先に書きたいと思う。駅では後者、つまり券面通りの運賃計差の方が採られた。私自身、最高の責任者はその場で対応してくださった駅員の方であるという認識を持っているため納得はしたのだが、一応個人的見解を載せる。

 結論からすると私は前者、最短経路で計算するものだと考える。70条の条文を引用する。

第70条 第67条の規定にかかわらず、旅客が次に掲げる図の太線区間を通過する場合の普通旅客運賃・料金は太線区間内の最も短い営業キロによって計算する。この場合、太線内は、経路の指定を行わない。

  規則第274条には「既に乗車した区間の普通旅客運賃」と書かれており、これはこの場合、東海駅から高尾駅までの普通旅客運賃となる。そしてこの経路は70条区間を通過している。その場合の普通旅客運賃は規則70条に規定されているように最も短い営業キロによって計算する。故に前者かなぁと思うのだが何か自信を持って言っている訳ではない。自身がないので旅客営業取扱基準規程5条という個人的に好きな決まりを引用する。

 (規定の解釈又は適用について疑いのある場合の処理方)

第5条 旅客の取扱上適用する規程について疑いを生じたときは、旅客の利益となるように解釈し、又は利益となる規則を適用したのち、その詳細を支社長に報告しなければならない。ただし、急速な処理を必要としない場合は、支社長の指示を受けなければならない。

 駅名を出すのは如何なものかと思ったが、別にこれは「こんな対応されましたムキーッ!」ってものでなく、高尚(?)な規則の議論であると考えているし、そもそもこんなブログ誰も見ない。こんな面倒臭いものにも真っ向から真摯に対応して頂いた高尾駅には感謝に堪えない。JR東日本にメールを送るのも何か厄介だし、まぁいっかという感じである。もし、これを読んで「どうなんだ」とか「こいつは何を言ってるんだ」とか「規則って面白いな」とか思って頂けると嬉しい。